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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(オ)193号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士林百郎の上告理由は、末尾添附の別紙記載のとおりである。

記録によれば、昭和二五年五月一八日午前一〇時の原審における口頭弁論期日において、原裁判所が、控訴(上告)代理人の期日変更申請を却下し、控訴人において控訴状の記載に基づき陳述したものとみなし、出頭した相手方被控訴代理人に弁論を命じた上、同期日に弁論を終結したことが認められる。論旨は右期日は原審における最初の期日であることを前提として原判決を非難するが、民訴第一五二条第四項にいわゆる口頭弁論における最初の期日とは、原審において最初に指定された口頭弁論期日を指すものと解すべきであつて、記録によれば、原審において口頭弁論期日として最初に指定された期日は昭和二五年四月一三日午前一〇時であつて、右最初の期日において原裁判所が弁論を延期し、右延期した弁論をなすべき期日として指定されたのが所論の期日であること明らかであるから、所論の期日は同条にいわゆる原審の口頭弁論における最初の期日には当らない。しかも控訴(上告)代理人が原審に提出している口頭弁論期日変更申請書には、申請の事由として単に「当日代理人において都合悪く出頭できざるにつき」と記載してあるだけであつて、右事由は顕著な事由に当るものとは認められないのみならず、所論の期日において、相手方被控訴代理人が控訴代理人の期日変更申請に同意しないと述べていること亦記録上明らかであるから(相手方の右不同意を原判決に判示する必要のないこというをまたない)原審が期日の変更を為さず上告人不出頭のまま結審して判決をしたことは少しも違法でない。又民訴第一三八条は控訴審にも適用されるものと解すべきであり、所論の期日において原審における最初の口頭弁論が行われたことも亦記録上明らかであるから、右期日は同条にいわゆる最初になすべき口頭弁論期日に当るものである。従つて、原裁判所が右期日において出頭しない控訴人において控訴状の記載に基づき陳述したものと看做し、出頭した相手方代理人に弁論を命じたこと及び控訴人(上告人)が事実上の答弁を記載した答弁書その他の準備書面を提出せず、控訴状にも事実上の記載がないこと記録上明らかな本件について所論のように判示した原判決は、たとえ第一、二審共上告人不出頭のまま終結された口頭弁論に基づいて言渡されたものであつても原判決には審理不尽その他所論のような違法があるとはいえない。

よつて民訴第四〇一条、第九五条、第八九条により主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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